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【BFI】バリアフリーインタビュー② :えひめだんだんパートナーズ代表岩崎陽さん~その①

みなさんこんにちは。おでかけイーヨ企画編集のEikyoです。バリアフリーインタビュー第2弾をお届けします。今回お話しを伺ったのは、単独で歩いたり走ったりすることが困難な視覚障がい者に対する伴走者の団体「えひめだんだんパートナーズ」代表の岩崎陽(あきら)さんです。

実は私視覚障がい者が外出する際の付き添い(同行援護、通称ガイドヘルパー)を時々しており、その関連で岩崎さんにお会いしたことがあります。その際少しだけ話しをしたのですが、岩崎さんは視覚に障がいを持たれてまだそれほど経っていないのではないかと感じました。

それ故に今も多くの社会的バリアを感じているのではないか?だんだんパートナーズを立ち上げたのもそれが関係しているのでは?と思いました。そこでその経緯はもちろんのこと、少しご本人にとって嫌なこと~障がいを持つに至った経緯やそれ以降のこと~も含めて伺い、それらを伝えることもバリアフリー社会につながるのではないかと思いインタビューを申し込みました。

岩崎さんは快く承諾してくださり「えひめだんだんパートナーズ」のことから日常生活のことなどいろいろなこと話しをしてくれました。そこで今回は岩崎さんのインタビューとだんだんパートナーズで伴走(ボランティア)をされている方々の感想も含めた「えひめだんだんパートナーズ」編と日常生活についてインタビューした「バリアフリーとバリアバリアアリーの狭間」編の2回にわたってバリアフリーインタビューをお届けします。


〇岩崎さんが代表を務められている「えひめだんだんパートナーズ」とはどのような団体なのでしょうか?

視覚障がい者の活動の助力をメインとしたグループです。視覚障がい者が、自分が何をしたいか、どうなりたいかの年間の目標を立て、ボランティアさん(=伴走者)の力を借りてその達成を目指しています。昨年(令和2年)の10月から活動を開始しました。

現在(令和3年9月)72,3人のメンバーがおり、年齢層は様々です。メンバーの2,3割が視覚障がい者となっています。

〇年間の目標とはどのようなものなのでしょう?

ウォーキングをしたい人、ずっと部屋に閉じこもっていてまずは家を出たい・出ようとされる人、一人で電車に乗ってみたい、(女性なら)一人でショッピングに行ってみたい、デートできるようにダイエットしたい、あるいはアスリートの人は国体に出たい、パラリンピックに出たいなど、目標は人それぞれです。

だんだんに入ってきた際に面談を行い、1年後にどうなりたいのかそれぞれの目標を聞きいて目標設定をしています。その目標が何であれ、伴走者(ボランティア)がその達成向けて応援しています。

〇定期的に活動をされているのですか?

毎週火曜日は19時から、第2第4日曜日の朝9時半から、金曜日は個人練習をしています。(マラソンを目指す)アスリートの人はそれなりの距離を走るようになるので金曜日に個別練習をしています。

〇なぜだんだんの活動を始めようとしたのでしょうか?

僕が(視覚障がいとなり)運動しようとしたら、そういうもの(手助けしてくれる制度や仕組み)が見つけられなかったんです。そこで愛媛県視聴覚センターに聞いてみたところ、四国では徳島や高松には(視覚障がい者の活動を支援する団体※1が)あるが愛媛にそのようなものはないとのことでした。そこで高松、徳島へ通い、どのような仕組みなのか勉強をさせてもらいだんだんパートナーズを作りました。

(※1香川県には「てんとう虫パートナーズ」、徳島県には「阿波を共に走る会」があるそうです。)

視覚障がい者の活動を支援する国の制度としてガイドヘルプ(同行援護)~一人では外出できない視覚障害者に付き添って歩行の介助や誘導をする活動のこと~というものがあります。それとどう違うのか聞いてみました。

〇ガイドヘルプとの違いは?

ガイドヘルプは根本が仕事であり時間の制限があります。ガイドヘルパーは日常生活の助力です。それとは違って、ダイエットやマラソンなどガイドではそれだけ走ったりすることはできません。メンバーの数組は愛媛マラソンに出ようとしています。

〇伴走者もフルマラソンを走れる方?

そういう人もだんだんに入ってきてくれています。中には愛媛のトップアスリートとして活躍している人もいます。

〇伴走ボランティアの方はどのような方なのでしょう?

様々な人がいますが、公務員の人、銀行の人、薬剤師の人など会社のチームやグループに属してマラソンしている人も多いです。仕事上がりや休日にボランティアとして活動してくれています。

〇伴走をするためは気を付けなければならないことなどいろいろとあると思うのですが、その練習はどうしているのでしょう?

最初は弱視の方の伴走をしてもらい、伴走の仕方、走るときの喋り方、(人の)よけ方などを教えます。その人からOKがでたら全盲の方の伴走をするようにしています。

また練習時の伴走は2人で走るのではなく、前後に人が付き、前の人は通行人に(よけてくれるよう)声掛けをしたりします。幅2人分必要で、それなりのスピードで走るので安全確保のためにそのようにしています。

〇もうすぐ1年となりますが、(視覚障がい者の)メンバーの目標達成はどうですか?

ほとんどの人がそれぞれの目標を達成しています。

(話しが運動系・アスリート系のものと目標となってしまいましたが、)城山を上がったり、走ったりする伴走は一部です。それ以外にもいろいろな伴走者が必要です。日常生活ができるための伴走もいます。(一人で電車に乗ってみたい人、ショッピングに行ってみたい人などの伴走です。)

その場合は(視覚障がい者の)後ろから伴走者が隠れてついて回り、きちんとここ(堀之内)までバスに乗れて来られるか声を掛けずに見守り、危ないと思った時には声を掛けるようにしてもらいます。まず一人で行動できるか。白杖だけで一人で来ることができるか。そのようなことをします。

だから一緒に走る伴走もいれば、隠れて後ろにいる伴走もいます。それぞれの目標の達成に向けて伴走する人がおり、応援しています。


視覚障がい者が掲げた目標に本人と伴走者が共にそれに向かって進んでいく。10月の日曜日練習会に城山公園に活動の様子を見学させていただきましたが、「きずな」と呼ばれる輪になったロープを視覚障がい者と伴走者が握りしめ歩く姿、走る姿がとても印象的でした。そこで何名かの参加者に話しを伺ってみました。

視覚障がいの方

〇健康づくり、運動として徐々に走って行きたい。
だんだんに参加して、楽しく走ったり歩いたりすることができるようになった。
伴走の方がいると、いろいろな人と話すことができる。

〇目標は100m走で自己の記録を更新すること!
初めて伴走する人と走る役割を担っています。土の質、足元の状況、段差の声掛け、そして人が来ている時の声掛けなどを教えています。(Oさん弱視)


伴走者の方

〇普段は介護関係の仕事をしています。オリンピック・パラリンピックも開催され、盛り上がりを感じています。伴走は自分の生きる力になっています!(Wさん)

〇以前の聴覚障がい者にかかわる仕事をしていました。伴走は、自分のなまけ心にカツを入れるために始めたのですが、今ではお役に立ちたい気持ちと自分のために伴走をしています。(Mさん)

〇ランニングサークルの仲間が伴走をしており誘ってくれました。入って3ヶ月ぐらいとなります。これまで高齢者施設や養護施設でのボランティアはありますが、障がい者に関わるのは初めてです。

伴走体験ももちろん初めてです。視覚障がい者は(視覚)情報が入って来ないので、けがをさせないことを第一にしつつ、風景など違う状況を伝えながら走っています。伴走を始めてから障がい者にどう声掛けをしたらいいか分かってきました。声をかけるのも積極的になってきました。

6月にフルマラソンの伴走をしました。自分一人で走る時よりも「ゴールしてもらう」ということで責任がありました。ゴールした時のやり遂げた喜びはすごかった!一人で走った時の比ではなかったですね!!(Uさん)

〇マラソンチームに属していて、チームの人から声を掛けられ、私も行ってみようかということで始めました。

最初は怖かったし、みんなの気持ちを理解しようとしてしんどかった。でも伴走をしているうちに、みんな同じ立場でいることが分かり、私が視覚障がい者の気持ちが分からないように、向こうも自分の気持ちが分からないことが分かり、信頼関係を築いて行く中で、楽しもうという気持ちになってきました。

早く走ることよりも季節感を伝えること、自分が分からないことではなく自分の見えることを伝えるようにしています。

けがだけはさせないようにと注意を払っているのですが、歩道を走っているとスマホを見ながら走ってくる自転車、2列で並んで走ってくる自転車がいます。そのことを障がい者にも伝えるのですが、自転車の人にも(視覚障がい者と走っていることを)声をかけるようにしています。
(危ないことに)気づいて欲しい。特に夜。自分たちも公共の場所を走らせてもらっているが、自転車の人たちもそのことに気づいて欲しい。

今度坊っちゃんランランランで初めて大会の伴走をします。マラソンが終わったらどんな感じになるのかまだ分からないけど、ホッとするんじゃないかな~。(Nさん)

〇スポーツクラブで岩崎さんと出会い、会の結成に参加したんです。伴走を始める前は、見えない方ということだけで、その人たちの気持ちも分かりませんでした。けれども接していく中で、大変さを感じもするけれど、人間なんだからお互いに楽しむ権利があると思い始め、楽しめたらいいと思えるようになりました。

伴走は最初は怖かったけど数をこなして経験を積み重ねてきました。(伴走している時は)命を預かっています。いざとなったら盾となる覚悟でいます!(OKさん)

〇だんだんが結成される以前から伴走を10年しています。高松で行われるてんとう虫マラソンの協力から始めました。これまでにフルマラソンの伴走10回、100キロマラソンの伴走をしたこともあります。
松山にも気軽に視覚障がいの人が走ったり歩いたりできる場ができ、その中に自分も入れてうれしいです。

伴走の心がけは、
①安全第一で目的のところまで走る。そのための情報提供をすること。

②季節感を伝えるなどしてランナーとして楽しく走れるようにすること。

③お互い日常のことなどを話していくことで信頼関係を醸成していくこと。

①が6割、②③が4割です。

視覚障がい者と話しをし、彼らの世界観を知ることができました。お互いが話をすることで、お互いの人間性が高まっていきます。伴走をすることは自分自身を高めていくことでもあるのです!(Sさん)


参加されている方みなさん楽しそうでした。(私の主観ですが)特に伴走者の方々が活き活きしていたように思います。あの「きずな」と呼ばれる輪が、視覚障がい者と伴走者のバリア(壁)をフリーに(解放)しているようです。
岩崎さんが香川や徳島から持ち帰ったものは、視覚障がい者が運動出来るようにするための仕組みだけではなく、見えない壁を越えてお互いを高める絆も持ち帰ったようです。

最後に一応ガイドヘルプをしている者としてお伝えしておくと、ガイドヘルプもジョギングに付き合ったりすることも出来ます。ただガイドヘルパーの現状として中高年の女性が多いのも現状であり、ある程度の距離を走るとなると…、まずめったにいないでしょうね…。また後ろからついて回ることはガイド業務から外れてしまいます。
ただガイドヘルプも買い物、病院までの通院支援はもちろんのことコンサートに行く、旅行に行くなどの支援等も行い、視覚障がい者の自立や自己実現のためになくてはならない支援制度であることは間違いありません。

ガイドヘルプ制度と伴走者のようなボランティア活動が組み合わさると、より一層視覚障がい者の自己実現がなされるのではないでしょうか。そしてお互いが話したり、何かを共にしたりすることを通じて、理解し、理解され、よりよいバリアフリー社会となっていくのではないでしょうか?


えひめだんだんパートナーズのホームページはこちらから


インタビュー 令和3年(2021年)9月

インタビューアー:Eikyo