【BFI】愛媛大学アクセシビリティ支援室太田さんに聞く学びのバリアフリー
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目次
バリアフリーはもう古いのか???
数年前に愛媛大学にはバリアフリー推進室という部署があることを知りました。その名の通り大学内のバリアフリーを推進するものなのですが、今回「大学における学びのバリアフリーとはどうなっているのだろう?」と思いホームページで調べたところ、いつの間にかアクセシビリティ支援室という名称に変わっていました。
実はバリアフリー(barrier-free)という用語は日本や他のいくつかの非英語圏の国でのみ使われている半和製英語であり、英語(圏)では段差をなくすなど誰にでも使いやすくする手法を「accessible」などを使って表現されるそうです。ちなみにアクセシビリティ(accessibility)とは、「近づきやすさ」「得やすさ」などを意味します。
そこで今回なぜこの名称にしたのか、単に欧米スタイルに変えただけなのか!? それともユニバーサルなユニバーシティだけにそこにはもっと深い意味があるのか???「学びのバリアフリー」と共に愛媛大学学生生活支援課アクセシビリティ支援室の太田琢磨さんに伺ってきました。そのインタビューをお届けします!!
アクセシビリティ支援室とは
〇早速ですがアクセシビリティ支援室とはどのようなことを支援するところなのか、その目的を教えてもらえますか?
まずアクセシビリティ支援室の目的ですが、愛媛大学に通う学生で合理的配慮の必要な学生へのサポートをするということが大きな仕事になります。
例えば身体障害の学生で、聴覚障害のある学生であれば、文字通訳をしてくれる人を配置したり、車いすの学生であれば、ガイドヘルプや、教科書をめくるのを手伝うなどの講義支援や生活支援の人員を配置したりします。
支援には直的支援と間接的支援があり、例えば大学の中で買い物がしたいので手伝って欲しいというのもあれば、発達障害のある学生への支援として、ちょっと休憩したい、クールダウンしたい時にこちら(支援室)に来てもらうようなこともあります。
基本的には大学生活の中で困難性のある学生のサポートをすることが主な目的です。
その他の専門的になりますが、大学内における4つのバリア(※1)~物理的バリア、情報のバリア、制度のバリア、心のバリア~の解消とその対応を行っています。
(※1)4つのバリアとは
①物理的バリア…建物や交通機関などで、出入り口や通路に段差が あったり、幅が狭かったりすると、車いすの方など は利用できません。
②制度のバリア…障害があることで資格が制限されたり、入学や就職の試験が受けられなかったりすると、十分な社会活動ができません。
③文化情報面のバリア…目の不自由な方には点字や音声案内などがないと、また、耳の不自由な方には手話通訳や文字情報など がないと、情報が伝わりません。
④意識(心)のバリア…障害があることを偏見の目で見たり、逆に哀れんだりすると、平等な交流ができません。
広報さっぽろ 2002年2月号 より
〇大学に通われている学生さんたちで、何らかのハンディや困難を抱えている人への総合的なサポートする窓口ということですね。
ところで以前はバリアフリー推進室という名称でした。最近名称が変わりましたが、なぜ今回アクセシビリティ支援室となったんですか。
去年2021年の7月に「アクセシビリティ支援室」に変更しました。けれども実は名前の変更をして欲しいと言っていたのはそれ以前の5,6年前からです。なので今回ようやく変わったことになります。
その主な理由として「バリアフリー」という言葉がどうしても「物理的バリア」に結びついてしまいがちなことがあります。
もう一つは、障害者差別解消法(※2)の施行によって、私たちの仕事の範囲が広がったことにあります。
かつてはバリアの解消というと、例えば情報のバリアとか、物理的バリア~教室に入れない~などのバリアに対応していたのですが、現在私たちの仕事はどちらかというと、学生の権利を擁護することに変わって来ているんです。
ですからその中に物理的バリアの解消なども入って来きますし、支援者を配置するだとか、共有するだとか、説明するだとか様々なことが入っているんです。
あとバリアフリーというとどうしても身体障害者というイメージが強いんです。それがアクセシブルという言葉だとかなり広範囲になります。実際に障害の認定を受けられなくても大学生活の中で困難を抱えている学生もおり、広範囲に対応していくということも踏まえてアクセシビリティ支援室という名称となりました。
〇「バリアフリー」だと物理的なものであるとか、身体障害者というイメージが主となりがちですが、現状では精神障害や発達障害の人たちの支援、あるいは障害とは違ってきますけどLGBTQとか含め、学生生活を送るうえでさまざまな困難や支援の必要を抱えている学生たちの総合的なサポートを行う部署ということですね
そうですね。
(※2)障害者差別解消法とは
2013年に成立(2016年施行)した法律で、
①障害を理由に差別的取り扱いや権利侵害をしてはいけない。
②社会的障壁を取り除くための合理的な配慮をすること。
③国は差別や権利侵害の防止をするための啓発や知識を広めていくための取り組みを行わなければならないことを定めています。
日本障害フォーラム「障害者差別解消法ってなに?」より
〇アクセシビリティ支援室のホームページには過去の取り組みの事例が載せられていますが、それを見ると、ハード面においてスロープ、エレベーターの設置はもちろんのこと、情報として資料やスライドの準備であるとか、教室における座席~特定の場所確保~とか、途中入退室を必要に応じて認める、試験時間の調整、支援者をつけるなどの人的確保など、本当に様々な対応をしているのだと感心したのですが、一人ひとりそれぞれの困難に合わせて個別で組み立てていくのですね。
そうですね。言い方としては完全にオーダーメイド対応と考えてもらっていいですね。もちろん全体的な支援として典型的な対応が必要というケースが多いのですが、中にはそこに当てはまらない人もいるわけで、そこはやはり合理的配慮(※3)の考え方から、そこをどう調節するかということが私たちのメインの仕事となりますので、やはり個別に対応を決めていくということになります。
(※3)合理的配慮とは
合理的配慮とは、障害のある方々の人権が障害のない方々と同じように保障されるとともに、教育や就業、その他社会生活において平等に参加できるよう、それぞれの障害特性や困りごとに合わせておこなわれる配慮のこと。2016年4月に施行された「障害者差別解消法」により、この合理的配慮を可能な限り提供することが、行政・学校・企業などの事業者に求められるようになる。
合理的配慮とは – 意味と具体的事例 |LITALICOジュニア| より
〇もし障害に当てはまらない、障害手帳を持っていない人が配慮を受けたいと思えば、その時は、例えば医師などの一筆などがあれば、支援を受けられるのですか?
基本的に合理的配慮を受ける要件として、障害認定のあるなしにかかわらず、第三者からの視点から「支援を受ける必要性がある」という証明が必要となります。もちろん私たちも専門家として、傍から学生の様子を見て支援が必要だなと分かるのですが、本当は合理的配慮の提供が必要ないのに、提供してしまったということにならないように、第三者からの意見と照らし合わせて、やはり必要だということとなれば配慮を受けられるようになります。
発達障害のある学生への対応
〇現在どのくらいの人が支援利用、配慮を受けているのですか。
本学全体では、現在89名(令和4年度)の方が申し出をしています。ここ最近の傾向としては発達障害の学生が非常に増えています。
改正発達障害支援法(※4)が施行されてから、現在5年ほどたちますが、その初期に義務教育の中で支援を受けて勉強し、その学生たちが大学生となってきているわけです。そのため入学当初から私はこういう支援が欲しいとはっきり意思の表明ができる人がとても増えてきたと感じていますし、自分で意思の表明ができる学生さんが増えていることはすごく良いことですね。
(※4)
2016年5月、「発達障害者支援法」が改正され、発達障害者への支援は社会的障壁を除去するために行うなどの基本理念が追加され、学校教育においても「共生」という点が強調され、「一人も置き去りにしない」、「可能な限り発達障害児でない児童と共に授業を受けられるよう配慮」という言葉が盛り込まれ普通級に通う発達障害児も、学校と連携して支援計画や指導計画を作成することとなった。
発達障害者支援法その基礎と2016年の一部改正について | atGPしごとLABOより
〇発達障害の人それぞれ自分が学生生活をする上で、こういう支援をして欲しいと要望するとなると、より多くのニーズが出てくるのではないですか?
そうですね。本当に多様なニーズがありますので、それに出来る限り一個一個対応ができるよう日々勉強することが続いています。
〇ひとり一人の発達障害の症状に応じた対応を?
それぞれに合わせているようにしています。例えば、試験の時だけは別の教室で受けたいという希望もありますし、ADHDの学生で授業に出席できるけれど、出された課題をどのような順番で行えばよいのか分からないという人もいます。
私以外にもう一人担当者がいるのですが、「じゃあ来週までに、これとこれをこの順番でやっていきましょう。」とアドバイスしたりしています。時には課題が詰まってしまって「わあ、もう無理!」とパニックになって課題に手がつけられなくなってしまうとこともあり、その際は先生に少し伸ばしてもらえるよう依頼したりもしています。他には授業の履修登録の仕方が分からないという学生もいますし、本当に一人ひとり会って「何に困っているの?」と確認しています。
あとは、逆のパターンもあって高校までは支援が必要だったけれど、大学になったら必要なくなったということもあります。
〇大学に入って支援が必要でなくなるのは、年齢的に落ち着いてきたということ?ほかに何かの理由があったりするのですか?
大学の場合はフラッと出ても目立たないということもありますし、「後ろの方に座ってしんどくなったらそうっと外に出な」と言っています。先生には事前に「ちょっと調子が悪くなった時には一旦外に出て、落ち着いてから戻ってくることがあります。」と一言、合理的配慮依頼文でも伝えておき、そのうえで本人にもフォローしていくという形が多いです。
〇そのまた逆で高校までは発達障害に気づかなかったけれど、大学になって発達障害があると気づく学生もいますか?
いますね。やはり大学に入ってから初めて「あれっ?」となって調べてみたら発達障害だったという子もかなりいます。でも減ってきているような気がします。発達障害支援法のおかげで高校時点まで、義務教育段階で発見されているという学生が増えてきたというのはある意味喜ばしいこととも言えます。これまでですと大学に入るまで見逃されてきて、大学でいろいろと問題が起こってきて、「あれ?」っと思って調べてみるとやっぱり発達障害だったというパターンの方が多かったですね。
あとは本人には自覚がない方、自覚がないけど親が心配して連れてくることもあり、いろいろなパターンがありますね。
それともう一つ多いのは、うつ病ということで、隣にある総合健康センターでお話しを聞いていて、調べた結果、その根本的原因が発達障害であって、その二次障害によってうつ病を発したということも散見されます。
支援する人々と支援方法
〇HPを見ていると支援をするいろいろなボランティアの方を募集しているようですが、現在ボランティアの数はどのくらい?
本学ではボランティアとしてはやってもらっていません。すべて費用を払って雇用するという形でやっています。なぜならそこは守秘義務の問題等も絡んできますので、ボランティアとして支援を依頼することはせず、雇用して支援対応をしてもらっています。現在だいたい120人ぐらいの支援者がいます。
その多くは聴覚障害の学生に対する支援で文字通訳が多いですが、その他にも例えば病気で手術を行ったためにまだ学校へ来られない方へ授業のライブ配信を行ったり、自分でノートを取るのが難しい、いわゆるワーキングメモリ(※5)が小さいのでノートを取っていると授業の内容が分からなくなってしまうという学生さんを対象に代筆支援を行ったりしています。
その他どうしても教室に行くのが難しい学生がいたりしますが、その場合先生の許可をもらえたら私たちで授業の映像を撮影し、それを後から家で見てもらって、同じような課題を出してもらってというような対応もやっています。
(※5)ワーキングメモリとは
ワーキングメモリは脳の前頭前野の働きの一つで、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶し処理する能力。ワーキングメモリの役割は、入ってきた情報を脳内にメモ書きし、どの情報に対応すればよいのか整理し、不要な情報は削除すること。
ワーキングメモリとは?【LITALICO発達ナビ】 より
〇HPでは(聴覚障害の学生に対する)支援でPCによる要約筆記や文字通訳をするにあたって遠隔で支援を行うようになるとありますが、これはどのように支援をするのでしょう?
Microsoft Teamsというシステムを大学で全体的に使っています。アイパッド(iPad)でTeams会議を立ち上げて、それを通じて音声を支援者がいる自宅やアクセシビリティ室に届けます。そこで聞いたのを打っていくんです。これはcaptiOnlineというウェブブラウザ上で使えるシステムなので非常に便利なんです。ですから教室や現場に支援者はいなくても構わないのです。実はこれはコロナ前からリモートで履修していた学生に使っていたもので、たまたまコロナになって、こちらの方が都合がいいということで全面的に切り替えました。だから基本的には文字通訳では、ネットワークさえ通じれば場所を選ばないんです。
ただ場所を選ばないと言えば少々語弊があって、例えば以前高知の県境でフィールドワークを行うことがあり、先生に内容を聞くと「川に行って石を取る。」とのことで、その川まで電波は通じるのか???ということになりまして、結果かかろうじて電波が通じたので大丈夫だったのですが…。以上の事から現在は遠隔情報保障という形で文字通訳を提供しています。
〇大学の授業となると専門的な用語も出てくると思うのですが、そこはどのように対処しているのでしょうか?
現在愛媛大学の学生である支援者と外部の人の支援者もいます。専門用語に関しては、やはり非常に難しいので、毎回同じ人に入ってもらえる人には、同じ人に入ってもらうようにしています。1回目の授業から支援に入ってもらっていると内容等が継続されてきますので、できる限り同じ人に入ってもらって、情報の質がよくなるように調整をしています。
〇人による支援であったり、更にはそこにIT技術を使ったりして、様々な組み合わせで支援をしているのですね。
私はもともと情報工学が専門なのでITを活用しつつ、最近ではDX(※6)を使って自動化したりして支援をしたりしています。
(※6)DXとは
Digital Transformationの略語。Transformationは「変容」という意味なので、DXを直訳すると「デジタルによる変容」となります。デジタル技術を用いることで、生活やビジネスが変容していくことをDXと言います。IT化が既存の業務プロセスの効率化を目指すのに対し、DXがもっと大局的なレベルで製品・サービスやビジネスモデルの変革を目指します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?正しい意義と推進ポイント | DOORS DXより
〇大学だけあって、最先端技術を取り入れながら個々のニーズに応える支援をしているのですね。
そうですね。というよりは仕事が増えすぎていて…、これだけの支援をようする学生がいるとこれまでのやり方では仕事が終わらないので、とにかくDX化して自動化できることは自動化していくようにしています。
ただどうしても自動化できないことも存在します。例えば学生との面談とか、会って話しをするなど、やはりそういうことについては自動化できないし、むしろ学生との時間を本来は大切にしないといけないことですし。そこをうまく切り分けてやっていかないと私たちも家に帰れないですしね(笑)。
愛大バリアフリーヒストリー
〇先ほど伺いましたがアクセシビリティ支援室となる前はバリアフリー推進室ですが、バリアフリー推進室はいつできたのですか?
2007年にバリアフリー推進室が大学で部署として立ち上がりましたが、それ以前に学生のボランティアという形でやっていました。1995年には障がいのある学生がいたとのことでそのころからやっているようですが、実際のところその前にも車椅子の方がいたとのことで本当はもっと前からやっていたと思います。ずっとボランティアベースでやっていたものが2007年に部署として立ち上げられたわけです。
〇ボランティア時代からすると四半世紀以上の歴史があるわけですね。太田さんはいつからバリアフリー推進室に?
2009年からバリアフリー推進室にいます。
〇では10年以上この部署にいることになりますが、バリアフリー、アクセシビリティを推進するにあたっての苦労話やエピソードがあれば教えてもらえますか?
やはり自分が来た頃だと、まだまだ先生方もこのような障害のある人が授業を受けていることを知らなかった人が多かったし、もしくは初めてなのでどうしたら?という方が多かったですね。
そういう中でエピソードというよりは、少しずつ先生方に説明して理解していってもらって、10年かけてじっくり進めていった結果、今先生方に言えば、「アッこれのことね。分かった。」とスムーズに対応してもらえます。
ですから私たちだけでなく、教員・職員も非常に理解を深めていってもらい、現在では大学内でもうまく支援ができるようになっています。
〇ホームページを見ると、「(支援者のものを含めて)資料を3部用意してください」とか、「なるべくカラーで用意してください。」など様々な対応が書かれていていますが、それらをすべてひとつひとつ説明し、理解してもらっているのでしょうか?
そうですね。ただ現在のように80名以上支援の必要な学生がいると、それぞれに説明しに行く時間もないので、現在は合理的配慮の依頼文章を学期はじめの履修が決まってから流すようになっています。
障害者就学支援員会というのがあり、委員長から学生の抱える困難を列挙したうえで、それぞれの学生に合わせて出していくようになります。これは現在システムに組み込まれているので、教員は履修登録されていればオンラインでいつでもどのような支援が必要なのか見られるようになっています。(要個人情報なので個人名は記載せず学生証番号のみ)
〇このように障害のある学生に対してそれぞれに必要な支援を行うというのは、障害者差別解消法が施行されたことも大きいですか?
そうですね、やはり障害者差別解消法ができて更に、ここは国立大学なので法的義務を課されたこと(※7)で仕事がやりやすくなった面はありますね。もちろん日本の法律の特徴として、やんわりとした書き方になっているのですけれど、それでも本人の意思の表明があって、エビデンスも出て、それは支援が必要と満たせれば、それはきちんとやりなさいと言えることは非常に大きいですね。
(※7)私立大学等一般の機関でも2024年までに法的義務に変わる
〇障害者差別解消法の「合理的配慮の提供」は大きなポイントだと思うのですが、合理的配慮への理解はスムーズになされていますか?
本学では全教職員に対して障害者差別解消法に関する教育というのを行っています。その中で社会モデルとか医学モデルの考え方、著作権法の問題、補助犬の法律など今どういう法律がありますよということをお伝えしています。そういう形で学内でも合理的配慮、ただ障害がある人に対してだけでなく、困難がある人に対してサポートについて周知を進めている最中です。それでもやはり合理的配慮と配慮の違いが何なのか?というところが、理解していただくのが難しいですよね。
ユニバーサルキャンパス
〇ところで大学なので18~25歳ぐらいの人が主となると思いますが、今後大学は社会人にもどんどん開かれていくと思います。愛媛大学にも現在社会人コースなどあると思いますが、もし社会人で何らかのサポートが必要な人でも学ぼうとする際に支援を受けることは可能ですか?
基本的に愛媛大学が主催している授業やイベントに関してはすべて支援を入れることは可能です。もちろん科目履修学生も可能ですし、他大学からきている学生も可能です。基本的に私たちのところまでこういう授業を受けていて支援が必要だという申し出があれば支援は可能となります。
〇では私も社会人コースに参加する際配慮が必要となった場合は是非お願いします(笑)。
最近では大学院に進む人も多くなっていると思いますが、多くの学生の場合、大学の次は就職となりますが、就職に関する支援もするようになるのでしょうか?
就職に関しては、就職支援課というところがあり、そこに一人合理的配慮が必要な学生を担当する方がおり、そちらの方が対応するようになっています。けれど進路は様々です。一般企業に就職される人もいますし、就労支援A型で一旦就業して、そこから次のステップを目指す方もいます。あと特例子会社に就職される人もいます。発達障害の方の場合ですと、それぞれの特性に合わせてストレスの無いようなところへと割り切って、特例子会社へ行かれる方もいます。
その他最近聞くのは在宅勤務です。もう仕事に出社するのではなく、フル在宅勤務で自宅から仕事をするということを選べるようになっているので、自分が一番いい方法を自分が見つけてやっているようになっていると感じますね。
(※8)特例子会社とは
特例子会社とは、障害のある方の雇用促進及び安定を図るために設立された会社です。障害のある方が働きやすくなるよう、障害に配慮した「短時間勤務」や「通院のための休暇」「仕事(量・内容)の調整」などのサポートが整備されていることが最大の特徴になります。
特例子会社とは?|LITALICOワークスより
〇なるほど、働くスタイルも様々となりそれぞれに応じたところへ就職しているのですね。では、最後に今後アクセシビリティ支援室が目指すところ、展開していこうということはありますか?
普通の学生というのは、~実は私たちの専門性からすると普通の学生なんていないのですが…~、フラッと学校へ来て、授業を受けて、学食に行ってご飯を食べて、また授業を受けて帰りますよね。その当たり前を障害があってもできるようにしてもらいたいですね。
これまでだと、2000年以前では、そもそも入る前の段階であなた障害があるからとスタートラインにも立てなかったことも多くありました。でも現在はそういう時代ではなくなっています。学力入試において必要な学力があることを示して入学してきたのならば、本人が100%の力を発揮できるような環境をスムーズに整えて、学業を終えられるようにフォローできるようにしていきたいと思います。
よく最初の面談で言われるのは「エッ、ここまでやってもらえるのですか?」と保護者の方からよく言われるのですが、それはこれまでの学校生活の中でいろいろなものをあきらめて妥協してきたのではないかと思うんですね。そういう障害があるから妥協しなければならないということにならないように、それぞれに必要な環境を整えていければいいなと思います。
いかがでしたでしょうか?学問の先端であるユニバーシティだけあって「学びのバリアフリー」は想像以上に進んでいました。「おでかけイーヨ」もえひめのローカルアクセシブルWebマガジンというコンセプトに変えようかな???
さて、今回の写真では分からないと思いますが、実は太田さん自身が聴覚障害のある方なのです。そこで次回は聴覚障害のこと、聴導犬のこと、そして相互理解に必要なことなど太田さんへのインタビュー第2弾をお送りしたいと思います。
現在(2022年10月)愛媛大学アクセシビリティ支援室は愛大ミューズ1Fにあります。
インタビュー時点での情報です。
インタビュー:2022年(令和4年)11月
聴き手:Eikyo